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平成最後の夜 - 医療

さて、皆さんは平成最後の夜をどんな思いで迎えたでしょうか?
感傷に浸る人、昔を振り返り懐かしむ人、ただひたすら陽気にお祝いする人・・・・

ヴィネはその時入院していました。
昨年脛骨高位骨切術という痛そうな、名前の手術を受けて、4月30日の平成最後の日にその時に埋め込んだ金属プレート除去術を受けたのです。麻酔は腰椎麻酔で関節鏡で関節内を見て、その後麻酔薬で意識を落としてプレート抜去したのです。

腰椎麻酔で大量の薬を使ったのか、術後の痛みはしばらくなく、それは良かったのですが、中々尿意が起こりません。夕食も取り水分も500以上飲んで、コーヒーだって飲みました。その上点滴で1000も入っています。最後まで麻酔の影響が尻あたりに残っていて、しびれています。

術後10時間たった夜10時、さすがにこの辺で出しておかなきゃまずいだろう。下腹部を触ると膨れ上がった膀胱で盛り上がっています。ベッドサイドに立ち上がり、尿瓶を当てます。歩いてトイレに行ってもいいのですが、ここは安全のため、初回は尿瓶を使いました。

予想はしていたものの、なかなか尿は出ません。
いざ出そうとすると出ないことは時にあることで、例えば講演会の休憩時間などで短時間に一斉にトイレに人が集中した場面で、「絶対にしとかなきゃ」と自分に義務を負わすようなことをすると、突然出なくなることがあります。「やばい!」と焦ると余計でなくなります。となりから勢いよくシャーっという音が聞こえるとなおさら。自分より後に入ってきた人が次々に用を済ませて出ていくと緊張は極限に達し、どうあがいてももう出ることはありません。こうなると諦念で肩をがっくりと落とし、あとは誰にも悟られないように、いかにも「俺は用をすましたぞ」とばかりに、腰を軽く上下に震わせ最後のしぐさだけして便器を離れるしかありません。

この日はせかされるでもなし時間はたっぷりあります。一人暗い部屋の静寂の中で尿瓶を前に佇んでいるのです。10時間も経って多少麻酔が残っているだけでこんなに尿が出ないものなのでしょうか?

もしかすると術後で病室にいるという非日常的な環境が緊張を作り出しているのではないでしょうか?そうだとしたら積極的にリラックスしたイメージを抱き、尿道括約筋に緩むように働きかえればいいんじゃないでしょうか?

「そうだそうだ、いい子だから緊張を緩めな、そうっとそうっとリラックスしよう。」

下腹部を円を描くように撫でまわし、自分でも括約筋が緩むイメージを思い描いて、膀胱最底部にイメージ周波を送ります。

その時です。尿瓶を持つ手がやや暖かくなりました。

「出てるか・・・」

音はない。でも少し右手にいままでなかった重さを感じる。わずかながら出ているに違いない。音がないのは尿が尿瓶の壁をそっとつたっているからに違いない。まだ麻酔が残っている尿道にもかすかだが水の流れを感じる。

「このまま行ってくれ!」

すがるような気持ちで願ったが、其の後尿瓶の重さは変わらず。括約筋はまた緊張してしまったようだ。

「本当に出たのだろうか?」

そんな疑問を持ったのは当然の成り行きでした。尿瓶をかざしても暗闇の中では確認できない。そこで耳元で振ってみた。

ちゃぷちゃぷ

おお!やっぱり出てくれたか!?

うれしさのあまり、こめかみあたりに冷たいものがはねたことは気にならなかった。どうせ俺の分身だ。

出るには出たが、15分以上かかった。これ以上頑張っても出そうにもない。いったんベッドに戻って戦略練り直しだ。

出たのはせいぜい50cc程度だろう。時間的経過と摂取水分量を総合的に考えて、最低でも500はたまっているはず。下腹部の張り感から考えて600からマックス800か?膀胱最大許容量に近い。このまま1晩過ごせるわけない。麻酔が完全に切れたら出るんだろうが、平成の尿は平成のうちに出すべきだろう。

そんなことを考えているうちに体に異変を感じた。突然尿道周囲の皮膚感覚が急に戻ってきたのだ。おもむろに触ってみると

「おお懐かしの感覚!これだ、これなら出るはずだ」

再びベッドサイドに立ち、尿瓶を添えた。さらに今までと違うのは高揚する心の動きだ。今までは排尿に対するすがるような、いわば守りのような気持だったが、今は違う。

「出るぞ、勢いよく出してやろうじゃないか」

という胸の高鳴りを伴う攻撃的姿勢だ。その気持ちに呼応して尿道括約筋は開いた。じょじょじょじょ、とまるでミキサー車からコンクリートが押し流されるように出続ける。右手に持つ尿瓶はどんどん重く温かくなる。

「いったいどれくらい出るんだろう。もしかするとあふれるんじゃないか。」

尿瓶の内空を共鳴する音が次第に高くなる。尿が溢れてナースコールなんてことになったらとっても恥ずかしい。この病院の語り草になっちゃうではないか。

しかしそこは尿瓶もうまく考えて作られていると見え、あとでわかったのだが、一回の尿ではどんなに頑張っても溢れない容量をクリアしているのだった。こうして出た尿は650!!結構色も濃かった。記念に写真に収めたが、ここに載せるのはためらいを感じる。いずれにせよ、平成最後の仕事を無事成し遂げられて、そのあと深い睡眠に陥ったのは言うまでもない。

ヴィネの平成最後の夜はこうして帳を下ろしたのでした。

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